母の昭和を超えてゆけ

2008年生まれの娘に母が昭和の時代に読んだものを押し付ける

長い長いお医者さんの話

 

長い長いお医者さんの話 (岩波少年文庫 (002))

長い長いお医者さんの話 (岩波少年文庫 (002))

 

これは本当におもしろくて挿絵もかわいくて、
子にも絶対読ませようと思っていた作品。
しかし懸念が一点あった。
「訳:中野好夫
英文学者じゃん!てことは重訳じゃん!(原語はチェコ語
中野好夫といえば私の中では『闇の奥』。
大学の英語の授業で原書を読まされて、すぐ訳書に逃げた思い出が……)

うーん、私も重訳ので問題なく楽しんだし、そんなに目くじら立てることもないかな、でもやっぱり現代の感覚からするとオリジナルに近いものを読ませたいような気も……

岩波以外にするか?

フェリシモが2008年に『お医者さんのながいながい話』として出版してる。

お医者さんのながいながい話 (チャペック童話絵本シリーズ)

お医者さんのながいながい話 (チャペック童話絵本シリーズ)

 

でも品切れっぽいな
そして岩波の9編が収録されているわけではなく、「長い長いお医者さんの話」だけみたい。
なにより、描き下ろしのイラスト(挿絵は見てないのでわからないけど)もかわいいけど、やっぱり、やっぱりヨゼフの挿絵がないとだめなのよ!

となると『カレル・チャペック童話全集』がチェコ語からの直訳。

カレル・チャペック童話全集

カレル・チャペック童話全集

 

もちろん挿絵もヨゼフのもの。
しかも岩波に収録されていない2編も収録。
だがいかんせん大人向け。
漢字が読める読めない、字が大きい小さいのレベルでなく大人向け。
なじみのない言葉はすべて割注。

まあ重訳でもいいか、と観念して岩波少年文庫(ハードカバーは品切れ)版を購入したところ……なんと訳者あとがきでチェコ語版と比べて手を加えた、
人の名前、土地の名前などはチェコスロヴァキアのものに変えた、と明示してあるじゃないですか!
なーんだ!これさえチェコのものになってれば、ほかが重訳かどうかなんて私にはわかんないよ!
ノープロブレム!
というわけで、悩む必要は一切ありませんでしたことをお知らせします。

ちなみに娘は「おもしろいーーーー!」と最上級の評価(過去の最上級評価獲得作品は『三人のおまわりさん』『三人のシュタニスラウス かみ舟のふしぎな旅』『ちいさいモモちゃん(シリーズ)』)。
乗り換え待ち用に旅行に携帯させたところ、ややもするとホテルで続きを読みふけろうとするほどでした。お願い、せっかく遠くまで来たのよ……

「お母さんのおすすめの本はどれもものすごいおもしろい! みんなにもおすすめしたい!
(けどしない)」と母の選書にお墨付きを与えてくれた一冊となりました。


兄のヨゼフ・チャペックによる『こいぬとこねこは愉快な仲間』も楽しいお話です。

こいぬとこねこは愉快な仲間―なかよしのふたりがどんなおもしろいことをしたか

こいぬとこねこは愉快な仲間―なかよしのふたりがどんなおもしろいことをしたか

 

こちらも本来の児童書としての位置より少し年上向けに出版されているのですが、これは読み聞かせならぜんぜんいけると思います。長いけど。
漢字さえ読めれば、小学校中学年から自分で読めるのでは。
ズボンに穴が開いたらミミズで縫うといいですよ。

岩波少年文庫『長い長いお医者さんの話』収録

  • 長い長いお医者さんの話
  • 郵便屋さんの話
  • カッパの話
  • 小鳥と天使のたまごの話
  • 長い長いおまわりさんの話
  • 犬と妖精の話
  • 宿なしルンペンくんの話
  • 山賊の話
  • 王女さまと小ネコの話

寺村輝夫によるエッセイ付き)

青土社カレル・チャペック童話全集』収録

  • とってもながーい猫ちゃんの童話
  • お犬さんの童話
  • 小鳥ちゃんの童話
  • 大肥満のひいお祖父さんと盗賊の話(第一の盗賊の童話)
  • 水男(かっぱ)の童話
  • 第二の盗賊の童話(礼儀正しい盗賊の話)
  • 正直なトラークさんの童話
  • とってもながーいお巡りさんの童話
  • 郵便屋さんの童話
  • とってもながーいおいしゃさんの童話
  • 魔法にかかった宿なしトラークさんの話
  • 幸せなお百姓さんの話